気楽にブログ

2023-10-25 11:21:00

不惑のグリグリ

歯医者に通っている。日頃、「人生100年!健康に過ごすためには体のメンテナンスが大事!」と喧伝している手前、自分の体もお手入れしなくてはいけない。と言っても、実は10年ぶりなのだが。

 

人間には自己治癒力があるから大丈夫だとか、なかなか時間が取れなくて、などと自己欺瞞で歯医者を遠ざけていた。が、歯磨きの度に歯肉から血が出るのと、親知らずが見えてきてその周りの歯肉が炎症気味になり、ようやく通い始めた次第である。

 

そしてまず分かったことは、歯周病は放っておいても自己治癒しないという事実だ。確実に悪化だ。歯医者に2回通ってきれいにしてもらい、消毒をしてもらったら、血が出なくなった。うーむ、素晴らしきかな歯科治療。私の整体の施術も、このくらい分かりやすく効果が見えると良いのだが。

 

こんなことなら早くルンルンと通えば良かった。そう思っていたが、なかなかどうして。親知らずの抜歯は辛かったのだよ聞いておくれよ。レントゲンを撮ると親知らずは真横に向かって生えていた。一体どうしてこんなひねた育ち方をしてしまったのかわからないが、これを抜くのは難儀だな、ということは私も理解した。

 

でもまあ、15分から20分くらいだろうな、あと麻酔しているから痛くないだろう。と、いつもの気楽主義を発揮し、当日を迎えた。「どのくらいかかりますか(お金、時間)?痛いですか?」という質問を先生にしておきたかったが、心に余裕のあるおじさんを演出したかったので、やめておいた。でも、不安だから一応お金はコンビニで下ろした。

 

「じゃあ、今日は親知らず抜きますねー」と先生が気楽に始めたので、私も安心していた。かっこ悪い質問などしなくて正解だったと思った。が、しかし、30分経っても一向に抜けなかった。「なかなか抜けないなー」と先生は余裕がまだあったが、明らかに力の入れ方が変わってきた。何をされているのかよくわからないが、とにかくグイグイするのである。そして、そのグイグイで歯の根元あたりが割りと痛んだ。削る痛みは感じないのに、圧痛は感じるのかな?などと痛みの不思議について考える余裕も、次第になくなっていった。

 

「はい、じゃあ1回ゆすいでください」「ぐりぐり」「はい、じゃあゆすいで下さい」「ぐりぐり」一向に終わらない。終いには次の患者さんが来てしまう始末。先生がその方の治療を隣でされている間、麻酔で少しぼーっとしながら思った。「いつ終わるかわからないって、つらい」

 

「もういつ抜けても良いんだけどなー(おかしいな)」戻ってきた先生は言い、またグリグリを始めた。これが先生の予想通りならもう少しの我慢だし、先生の疑問通りならまだまだかかる。発言をどう受け取れば良いのか。私は朦朧としながら、疑問の方に展開していかないことを祈った。

 

そして、先生が今までより力を込めるときがやってきた。ぐいぐいぐいのぐり。ぬぽ。麻酔をしていても、歯が抜けたのが分かった。「やった、抜けた、やっと終わった。」安堵で少し涙ぐむ私。そして思った。・・・出産はこれよりもっともっと大変なんだろうな。

 

「先生ありがとうございます。少しは出産した妻の大変さがわかった気がします」と、感激の感想を述べたところ「そうですねー、でも出産は喜びがありますからねー」と返された。

 

「確かに」。抜けた親知らずは削られてボロボロになって、ガーゼに横たわっていた。私の体から出てきてこれから生きるのではなく、そのまますぐに廃棄されるのだ。それが分かっていたから、あんなにしがみついて離れなかったのかと思うと、少し寂しい気持ちがした。

 

止血をしてひと針を縫ってもらい、会計をして外に出た。予約時間から2時間半が経過していた。金額は思ったほど高くなかった。

 

「思ってたのと違ったな。」ベロで親知らずのあったところをひと舐めだけし、コンビニで夕飯にウィダーインゼリーを買った。レントゲンに写っていたもう一本の親知らずを舌で探し、まだ歯茎の下にあって分からないのを確認した。「こっちはまだ、いいよね」

 

理学療法士の整体in厚木

手当て整体 気楽に屋(KIRAKUNIYA)