気楽にブログ

2023-11-26 17:20:00

相手に得点させる しかも上乗せして

高校時代のテニス部仲間と、そのときの顧問の先生で町田で飲み会をしてきた。思い出話も出たが、わりと最近の話題が多かった。30年前と今では部活のあり方も変わってきており、先生の悩みも尽きないようだったが、「仕事が楽しい」という言葉と笑顔があり、嬉しく感じた。

 

「テニスや受験と集客は違うよー」とか「練習や受験勉強は努力が結びつきやすいもの」とか、私が愚痴ってみたところ、「陽介、それには反論するぞ」と言ってくれたのも嬉しかった。「周りのせいにしてはいけない」という基本を伝えられ、耳が痛いのだが、確かにその通りなのだった。

 

帰り際に、昔のように今も生徒に配っている部内通信を渡され(常備している)、翌日に拝読した。昔と変わらないところ、今の時代に合わせたところ、先生が学ばれ取り入れたところなど、ミックスされていた。ぱっと目にしたところにいきなり「岡潔」という文字があり、数学の先生だから有り得るのだが、今年私が影響を受けたナンバーワンと出会ったので、やはり人生の縁やタイミングはおもしろいなと思った。

 

岡潔の話として「成果が表層に現れるのには時間がかかる」とか、他の著名人からの引用で「厳しい環境に身を置くことで成長できる」「やらされるのではなく、自分からやる」「知識を得てそれを試す」「自分で考える」「上を目指すならやるときは120%でやる」などが書いてあった。

 

他には「利他について」や「自分が部活をやる社会的意義」というものもあり、自分たちだけの活動ではないという視点は、私が教えてもらったときにはあまり書かれていなかったように感じた。

 

いや、そうではなくて昔も書かれていたが、私が読めていなかったことも考えられる。高校時代の私は、自分のテニスが強くなることの他は、あまり考えていなかった。まして、自分の部活での成長が、周りの人に刺激を与えるなんてことは、微塵も考えていなかった。

 

自分が強くなる、うまくなる、勉強ができるようになる。そういう自己完結型の成長には「あきらめずに努力する」「今するべきことを把握する」「試し、失敗し、自分で改める」ということが必要だと思う。だが、それだけでは足りないのだ。と、大人になってようやく私は気づけてきた。

 

〈利他に関して〉

利他はこのブログでもときおり出てくるワードなので、考えてみたい。

 

「自分がこうしたい」という思いをまずぶつけるのが必要だが、その先に相手のことを考えることも必要だ。それはテニス(シングルス)や勉強で、自分が得点することだけを目的に据えていては、得られないことだ。

 

相手の得点を考える。とは何か。

 

テニスの得点、受験の得点のための考え方や努力の仕方、それらを学ぶだけではもったいない。学校や部活で「利他」や「折り合い」についても学んでいけたなら、生徒のためになると思う。シラフだから冷静に言えるが、私がビジネスと違うと言ったのはこの点で、ビジネスは必ず相手のデマンド(あなたが必要だと思うこと)がある。だから、こちらが合わせる必要がある。そして、こちらが提供したいこと、それが顧客が気づいていないニード(私があなたにとって必要だと思うこと)に合致すれば、より素敵なことだと思う。相手の得点に自分が(上乗せして)寄与できる。

 

相手の希望に沿うだけでも難しい。しかし、自分の思いも伝えたい。誰にとって、どうなるのが良いことなのか、正しいのか、は本当に難しいことだと思う。そういう難しさがあることを、生徒も感じられたら、この先のために良いかもしれない。自分の得点だけでOKな仕事につく人は、多くはないだろうから。

 

その辺りを伝えるために、部内通信に「利他」が出てきているのだろうと考えた。そして、昔と同じように先生自身もまた、教育における利他や折り合いに、生徒に得点をさせる難しさに、悩んでおられるのだと思う。

 

そして、相変わらずそのお悩みが、部内通信から漏れ出てしまっているところから、生徒たちはそれぞれ自然(じねん)と感じ取っているのかもしれないなとも思い、さすがです!と最後に高尾山より高く持ち上げて、この稿を了とします。

 

町田高校テニス部 97年卒 元キャプテン 仲村陽介