気楽にブログ
コメデイタッチのファンタジー
私が書いたアマゾンのレビューで、何故か一番多く皆様から「いいね」がついている投稿です。未見の方はぜひどうぞ。
グランド・ブダペスト・ホテル
<主人公とストーリーについての勝手な考察>
主人公は一流ホテルのコンシェルジュに相応しく装うために、香水と詩を振りまく。そうしないと、どこかで育ちのボロが出てしまうことを、自分で分かっているからだ。捕まった後の脱走後にベルボーイの不備を知り、どなりつける場面がある。あれは自分自身もまた、育ちに対する劣等感があったからなのかもしれない。
盗んだ絵も、素晴らしいと言っておきながら売ってしまうつもりだし、コンシェルジュでの仕事でのお金持ちの「お相手」も、ビジネスライクだ。心が通うような何かを、手にできないでいる。
だが、彼にはたくましさとやさしさがある。検閲や刑務所で屈しないし、お客ではない人たちにも、気配りとやさしさを随所で見せる。だからこそ、刑務所からの脱獄で手を貸してくれる人がいるし、その後も同業者からの助けを得る。
そして、それはベルボーイに対しても、その結婚相手にも、伝わっている。「尊敬している」と言われたとき、彼はホテルのお客からお礼を言われるときよりも、嬉しそうな顔をした。
香水や詩がなくても、誰かから信頼してもらえることが分かったあとは、お金はそこまで重要ではなくなったのだろう。だから、最後の列車の場面でも、二人が寄せてくれた信頼に応えようとしたのだと思う。
現実は嫌気がさすことがあり、自分自身もまともな人間じゃないと分かっている。美しい詩のようにはいかないと知っているから、生き急いだようにも見えた。ミステリー仕立てにはしているが、コメディタッチのファンタジーの物語だ。たくましさとユーモアとやさしさで現実に抗い、人を信じようとした、ちょっと悲しい男の話だ。
手当て整体 気楽に屋(KIRAKUNIYA)